星霧の館

創作小説の他、特撮やFFSの記事を作成し無事に世界は崩壊した…

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ミストルティン編・外伝 『ロスト・アロー』

2014.01.18 (Sat)
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警告:この■■は■■されています。
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「おやすみ、■■」
「良い年をな」
「うん。お休み。父さん。母さん」
「おやすみなさい!■■■■!」
「うん。おやすみ▲▲」
「初詣は10時だからね!ちゃんと支度しておいてね!」
「……おやすみ。良い年を」

―それが少年と家族との、最後の会話となった。

西暦●●●●年、1月1日。世界は、一度終わった。
ミストルティン編・外伝『ロスト・アロー』

■■は…少年はベッドから身を起こす。
前もって聞いてはいたが、想像以上に形容し難い感覚だった。怖い、というよりは悲しい、寂しいというべき感覚だった。
…ともかく、その感覚により、彼は仮眠から目を覚ました。
世界が終わる…止まることは分かっていた。
だが打てる手は既に打っており、特にすることも無かったのだ。

少年が手に入れてきた『枝』は世界に定着した。
『枝』はその役目を果たした。
その結果…世界は停まるだけで済んだ。

…そうでなければ本当に終わっていた。

厳密に言えば時間が停止した、というのも正確な表現では無い。
この今…●●●●年1月1日●時●分●秒より先の未来はもう何処にも存在しない。


あの■■■■■はこの世界に侵入し食い荒らし犯し腐らせ滅ぼし消滅させ、未来側から過去側へと侵食してきた。
この世界を樹木に例えるなら、未来へと延びゆく枝の先から喰われてきて、今も齧られ続けている。
『枝』により『ここ』までしか進めないだけだ。
アレは■■■■■の中でも、停まった時の中では動けないタイプである。そうと分かっていたから使えた手であるし、この手が使える相手だからこそ侵入を許してしまった。


…何にせよアレを消さない限り未来は戻らない。
それは少年の役目だ。

『枝』…●●●●●●●にアレを排除する力は無い。元より『枝』もまた毒。
少年とあの少女は、毒を以て毒を制したのだ。アレを排除すれば今度は『枝』が猛毒として作用する。
『枝』を託した●●●には申し開きもない。背負えるものなら自分で背負いたかった。今は■い■がいずれ、●●●を■■してくれることを願うばかりだ。

だからこそ、アレを確実に倒す。自らの手で。
それがせめてばかりの償いであり、義務であり、使命であり、宿命である。
誰かに強制されたのでは無い。
自分が選ばねば、誰かに押し付けることにはなっただろうが…それでも自分の選択である。
『枝』を背負えぬのなら、こちらを背負うまでだ。

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机を開ける。お気に入りの本や文房具、ハンカチ、ナイフ、懐中電灯、縄を―『匣』に次々放り込む。
『匣』とは魔術の心得のある者が皆持つ、携帯異空間である。
個人差はあるがその容量は広い。少なくとも彼の場合は、部屋ごと全てしまうことも、やろうと思えば出来る。

空っぽの部屋の中に残ったのは机、ベッド、壁掛け時計、図鑑、写真立て。
写真立てを手に取り、写真だけを抜くか少し迷ってから、そのまま収納した。
机とベッドは残す。愛着はあるが使い道が無い。
何より2つ合わせて父の給料一月分はする筈だ。弟に残すべきだろう。
図鑑や時計も同様である。
『カード』で軽く触れ、自分との『縁』を切る。
細かい傷や書き込みが消えていく、どの道、後で自動的に切れる筈であるが、それを任意で行う。
まず大丈夫だろうが、念の為だ。
自分の痕跡には消えて貰わねば困るが、自動的な消滅では机ごと消滅する可能性もあるのだ。

処理を終えると、部屋を出る。
二度と開けることの無いドアをそっと閉めた。
意外に寂しさは無かった。
所持品の大半を持ち出したせいか、それとも前々からの覚悟の為だろうか。

隣の部屋のドアを開ける。
ベッドの側にかがみ込み、布団を軽く捲る。
年の離れた妹の寝顔。妹だというのに、お姉さん風を吹かせようとするのが可愛らしい少女だ。
大切な妹。
でももう逢えない。
二度と逢えない。
その頬に手を延ばしてみようとして、止めた。
しばらく、無言で妹の顔を見つめた。

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…そもそも彼は何故停まった時の中を動けるのか?
音や光すら停まっているのに、どうして周囲を認識出来るのか?
彼の中を流れる時間が"自前"である。普段、世界に流れている時間とは同質にして別物。
移動や認識の際には、周囲にその時間を分け与えて干渉を可能にする。

しかし少年は未だ未熟。
やろうと思えば、目の前の妹に触れることは出来る。
だが、加減を間違い、彼女の意識まで動かす危険がある。
彼女には停まっているうちに兄のことを忘れて貰わねばならない。
何より、一瞬でも起きられたら…別れが辛くなるだけだ。

「さよなら、■■。みんなと仲良くね。僕の分も■■に優しくしてやってね」
手で触れる代わりに、別れの言葉を告げる。
後ろを向きドアを開ける。振り向きたい気持ちを堪え、後ろ手で、ゆっくりと、閉めた。

一階に降りる階段の途中で、視界が曇る。
その場で暫くの間、泣いた。

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一階。居間。

両親の寝室から持ち出したアルバムを拡げる。
放置すれば写真から自分だけが消滅し、不自然極まりない形になるだろう。
アルバム自体を廃棄する訳にも行かない。そこで別のアルバムを用意しておいた。
同じメーカー・同じ型番である。順番に新しい物に差し替えていく。

少年にとって、幸い…だったのは、両親が写真を切り抜くなどのアート的作業を好んでいたことと、ロングセラーのアルバムで種類が統一されていたことだ。
自分の映る部分を切り抜いても不自然になりにくく、代わりを探すのも楽だった。
ただし量がとてつもなく、写真の横に書きこみも多かった。

彼にとって筆跡を真似るのは容易である。
用意した数種のペンで両親の筆跡を寸分違わずコピーしていく。
文面は自分の存在を消した上で、「新しい記憶」との矛盾が無いよう曖昧な文言に一部変えた。
事前に文面を考え、旅立ちの決意後は写真に撮られない様にも配慮していたが、それでも大変な作業である。

単純な削除では無く、このような編集もある。
経年劣化感・使用感を出す偽装もせねばなない。
作業は難航した。
母が彼を孕んでからの30冊弱を何とか終わらせる頃には、体感で丸二日ほど経っていた。
そして日記の偽装には更に時間がかかり、合わせて一週間と半日経った。
完全に後始末を終えてから両親の部屋に戻る。

アルバムや日記を元に戻す。
現金化した自分名義の預金を箪笥の横、両親のへそくり入れに隠す。
これで持ち出せ無い物の処理は終わった。
想定外に時間がかかった。作業中に自分が生まれる前の日記を一応確認したのが原因である。
両親は、将来自分の子に付ける名前の候補として、■■…つまり少年の名を書いていたのだ。似たような記述が無いか慌てて探すことになった。
大変ではあったが、それ程の前から将来の子供のことを考えてくれていた両親に改めて感謝する。

「父さん。母さん。ゴメンね。大人になるまでも一緒に居られなくて。何もしてあげられなくて、ゴメン」
自分を育ててくれた十数年間…二人はどれ程の時と金と…愛を注いでくれたことだろう?
それを無駄にさせてしまう自分は何と親不孝なのだろうか?

例えば、不慮の事故で死んだ子供達。彼らのことを、少年は親不孝とは考えない。
だが自分で選んだこの別れは、自殺以上の親不孝だろう。思い出すら残さないのだから。
『改竄』により、子育ての経験値がゼロになってしまう可能性もあった。
だが彼を育てた経験は妹の時に既に生かされ、そこで二人の中に留まっている。
■■が忘れ去られても、彼を育てた記憶が消えても、経験値は生きる。
そして「男の子を育てた経験」は…弟の為に役立ってくれるだろう。
妹と弟がいれば、■■と彼を育てた両親の十数年は決して無駄にはならない。
「今まで、ありがとう。二人をよろしくね…」

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両親に別れの言葉を残し、ベビーベッドへ向き直る。
去年生まれたばかりの弟。
彼が生まれた時にはもう全て決まっていた。
全て。

「●●……多分、君が一番辛いことになるのかも知れない…。ダメなお兄ちゃんでゴメンな…」
震える両手を弟に伸ばす。
不思議と涙は出ない。
思い出を消す過程で何度も何度も流し尽くしたからだろうか?
意識して呼吸を行う。
自分の両手を握り合わせて、解く。
震えの停まった手で弟の肩に触れる。
そっと…そっと触れる。
時の停まった世界で、幼子の胸が上下する。
彼の時を少しの間動かした。

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「●●…良いかい?今の君には分からないだろうけど聞いてくれ……僕はこれからいなくなる。お姉ちゃんとパパとママを…僕の代わりに守ってくれ。そしていつか君は、僕が■■た『■』を…■■■■■■■を■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■警告:この■■は■■されています。この■■は■■されています。この■■は■■されています。この■■は■■されています。この■■は■■されています。■■されています。■■されています。■■されています。■■されています。■■されています。■■されています。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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両親の寝室を出ると、少年は台所に向かった。
金属の器にコンロの上の鍋を開け、汁を注ぐ。
個包の餅を二つ取り出し、器とは別にして全て匣に入れる。
これでこの家でやるべきこと、やっておきたいこと、したいことはもう何もない。
旅立ちの時だ。
何も無い?
……………………………………………何も無い?


ゆっくりと玄関のドアを閉める。
「行ってきま……」
何時もの習慣で言いかけて、
「…さようなら」
言い直した。
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道を歩く。
真夜中ではあるが、元日だけあって人通りは多い。
家族連れも少なくない。彼等を見ない様にしながら歩く。
時が停まっているとはいえ、移動の過程で空気には触れる。
コートの中の体温は冷めることなく保たれている筈だが、芯まで冷えて感じる。
僅かばかりの寒風との接触のせいだろうか。
■■で■り■をしてから、人の集まる方へと歩く。
人混みが目当てでは無い。見晴らしの良い神社へ向かう為である。
歩いて15分の距離。焦る必要は無い。
だが人気の無い方へと急ぎたかった。

そこで、地面を蹴った。

彼の跳躍力は常人とそう変わらない。
少なくとも自分の身長ほどの高さは飛び越せない。
しかし少年は自由落下することなく跳んでいく。時が停まっているせいでは無い。
初速を落とさず、かと言って加速もしない。
そのまま変わらぬ速度で宙を移動し、神社の外れへと向かう。
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目当ての場所に付くと、難なく着地をする。
放物線を描き、キロ単位の距離を移動してきたが、着地の衝撃は小さい。
それこそ自由落下の衝撃と同程度。
位置エネルギーは最高到達時から、増えも減りもせずそのままだった。
■■は石床に座る。

金属の器に入れた汁を点火スティックで温める。
手の上に餅を乗せ、炙る。熱さは感じない。そもそも熱が伝わってもいない。
彼の手の温度は一定を保っている。上がりもせず冷めもしない。
火は弱い為、餅が焼けるまで数分かかった。だが先に温めた汁の温度も変わらない。
焼き上がった餅を汁に入れ、雑煮が完成。
箸を出し、噛み締めて食べる。

微妙に母の味と違う?
具は全種類入れて来た筈だが、入れるタイミングを誤ったか。
(そういえば母さん、鶏肉を炙ってたっけ?)
この世で最後に食べる母の味だというのに、やってしまった。
気が付くと少年は笑っていた。
そして泣いていた。
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枯れた筈の涙を再び流し終えると、少年は立ち上がる。
その顔つきは既に戦う者のそれだ。
場所を移動する。
森の中の開けた土地。無人。
足元は乾燥し緑の少ない赤茶の大地が、数十メートルの範囲に広がる。

その中心部に箱から出した筒を設置した。
…打上花火だ。

――この停まった世界の中を動いているのは少年だけでは無い。
今この世界の未来に食いついている■■■■■とは別の個体、あるいは眷属とでもいうべき存在が、一つ入り込んでいる。
旅立ちの前に駆逐せねばならない。
それを誘き出すための花火だ。

奴はこの地球のどこかには来ている。
地表の全てから、それが目指すただ一つの目標の『枝』を見つけるのに、どれ程の時間がかかるかは分からない。
数分後かも知れないし、数億年後かも知れない。
だが『いつかは見つかる』のなら、時の停まった世界ではどちらも同義だ。
放置すれば、高確率で『枝』の影響を阻害される。
直接的に『枝』には触れられずとも、その忌まわしい体で包み隠せば、『枝』の効果は恐らく遮断される。
『枝』にとって覆いの外側、すなわちこの世界が別世界となり影響力を行使出来なくなる。

だから倒す。
そして、今戦えるのは自分だけだ。

一発目を打ち上げる。
上空数十メートルで咲く筈の花は、想定されるべき場所では咲かない。
大気圏を脱出してようやく咲いた。
打ち上げ時・炸裂時、どちらの初速も減じずに大きく咲いた。
二発、三発と打上げる。

製作者の想定性能以上に広がったとは言え、花の直径は数キロ以下。
本来なら地球の裏どころか隣の国にすら届く筈がないほどに小さい。
しかしアレの感覚は鋭い。
少なくとも人間よりは遥かに。
そして地上で動く者モノは他には無い。


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少年の眼前で、景色が両断された。そしてすぐに戻る。
斬られたのは隣町の辺りだが、何の痕跡も残っていない。
いつもの平穏な町だ。
アレが三発目で隣町を攻撃してきた。
それが精度が良いのか悪いのか?それは判断しかねた。少年は比較対象を知らない。
ともかく、更に打ち上げを続ける。

四発目、隣町と繋ぐ橋の辺りが切られ、戻った。
五発目、彼の通う学校の近くが切られ、戻った。
六発目、神社と街を繋ぐ階段が切られ、戻った。
七発目、少年を斬撃が襲った。

眼前の発射台を境に地球が左右に両断される。
むしろ世界のほうがソレを嫌って避けたと見ることも出来ようか。
何にせよ、その攻撃を受けた少年は……無傷。

それで、敵に気付かれた。
『修復』を少年が認識した瞬間、既にその■■■■■はそこにいた。最初からいたかの様に。
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少年が■■■■■を認識するより一瞬早く、数万の斬撃が放たれる。
一斉に少年を襲い、全て直撃。
巻き添えで地球が砕け散り、数億の人類が切り刻まれ、元に戻る。
この修復はアレの想定内の筈だ。
少年だけは最初から無傷。
この結果はアレにも予想外らしい。戸惑いめいた反応が見られた。

その■■■■■は十九次元めいた幾何学構造を毎瞬ごとに激変させていく。
仮に連続写真に収めたところで、どの2枚として同じモノを映しているようには見えないだろう。
その表皮にして内皮は黒。
あらゆる色彩の混合の黒…ではなくネガとしての黒。
近い物で言えば、それは影…実在しないが、確かに見える虚構の黒。
紙を切り裂いてできた切り絵の黒。

少年の目にはアレの攻撃で世界が刻まれた様に見えている。
実際は違う。
何も起きていない。
時が停まっている限り、アレは世界に干渉出来ない。
アレは世界という本に差し込まれた厚紙や栞のような異物。
世界という映画のフィルムに付いた埃。
画面に付着した黒いゴミ。
取り除けば問題は無い。


この例えで言えば、この世界の現状は、映画のフィルムの続きが焼失した状態で、無事な部分をデータ化したような状態である。
少年の時間は別の映画のデータであり、それをMAD動画の如く継ぎ足して物語を無理に動かしているようなものだ。
アレは保管されたデータを改変は出来ないが、異質なテキストとして中に入り込むことは出来る。
モニター画面に付着したゴミを、モニター自体のドット抜けと誤認するような現象ともいえる。

アレの目的は『枝』を見つけ、封じること。
本で言えば該当の文を、ページの表裏両側から黒塗りで隠す行為。
文に使われたインクは消えはしないが、その分は誰にも読めなくなる。
それだけで、未来を食んでいる方の■■■■■が侵食を再開する。
直接『枝』に干渉する必要は無い。
そしてアレは世界には干渉出来ずとも、同じ異物には干渉出来る。
だから、この少年にも干渉出来る…そう認識していたようだ。
だが、それは大きな誤りである。

世界の隙間、ページの隙間、フィルムの間隙に差し込まれた触腕による斬撃。世界自体には影響出来ずとも、ページの上、フィルムの上の異物は払い落とせる筈だった。
それが少年には一切通用しなかった。
人の知性とは本質から異なる■■■■■と言えども、動揺するのは無理もない。

「はっ!」
少年の左手に弓が具現化する。
右手で弦を引くと黄金の矢が現出する。彼の唯一の攻撃魔術である。
限界まで引き絞る。
手加減する訳ではないが、霊力は左程込めない。
回避されては困る。アレが警戒し、逃走される前に倒さねばならない。
まずは「軽く防げるはずの」一撃を確実に当てる。
少年は矢を放つ。

不可視の力場…障壁が矢を受け止める。
アレ本体と障壁の距離は、空間が揺らめいて判然としない。
少なくとも本体までは届いていない。
矢は初速を保ったまま力場の壁に留まっている。
その威力は心許なく、壁を破れそうもない。
少年は構わず二射目を放つ。
壁に防がれる。
壁は揺るがない。


二射目が消える前に、三射目を放つ。壁が防ぐ。
 三射目が消える前に、四射目を放つ。壁が防ぐ。
  四射目が消える前に、五射目を放つ。壁が防ぐ。
   五射目が消える前に、六射目を放つ。壁が防ぐ。
    六射目が消える前に、七射目を放つ。壁が防ぐ。
     七射目が消える前に、八射目を放つ。壁が防ぐ。

                  九射目、壁が防ぐ。
                   十射目、壁が防ぐ。
                    十一射目、壁が防ぐ。
                     十二射目、壁が防ぐ。
                      十三射目、壁が防ぐ。
                       十四射目、壁が防ぐ。
                        十五射目、壁が防ぐ。
                         十六射目、壁が防ぐ。
                          十七射目、壁が防ぐ。
                           十八射目、壁が防ぐ。
                            十九射目、壁が防ぐ。
                             二十射目、壁が防ぐ。
                              二十一射目、壁が防ぐ。
                               二十二射目、壁が防ぐ。
                                二十三射目、壁が防ぐ。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
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五百九十二射目、壁が僅かに揺らいだ。

九百五十射目、壁が僅かに押された。

千十四射目、壁にヒビが入った。

二千射目、壁が砕けた。


球状の壁の表面に留まっていた二千の矢。
一斉に中心へと降り注ぐ。
初速を維持したまま減速も加速もせずに。
戸惑いらしき様子を見せる■■■■■は、壁を再度展開する。
一枚の強度こそ割れたモノと同じだが、それを数十層重ねた。
金色の矢雨はそれを難なく貫いていく。

まともな矢や、銃弾、ミサイル、尋常の魔術ではこのような結果にはならない。
放たれてからの時間と移動距離、齎した破壊の量に反比例して、速度と貫通力は落ちるのが当然である。
攻撃対象の力を奪う術なら似た結果になるが、それも違う。
それを学習したソレは、今度は分厚い壁を一枚だけ生成した。
だが、もう遅い。

少年は駆ける。
跳ぶ。
撃つ。
敵を見据え、包囲旋廻しつつ、ひたすらに撃つ。撃ち続ける。
分厚い障壁の表面は数千の矢で埋まり金色のイガの様な有様。
留まる矢はその数を増していく。中のソレが殆ど見えない程に。
数十分。
数時間。
数日。
ただ撃ち続ける。
数千発。
数万発。
数十万発。
ただ撃ち続ける。
壁が、砕ける。

距離が近く、今度は障壁の展開も間に合わない。
百万はあろうかという矢雨が容赦なく、世界の異物に降り注ぎ、貫き、縫い止め、その場に釘付けにする。
少年の魂の力、霊力により浄化が起こり再生を阻害する。
それでも即死させるには至らない。だがこれでもう逃がしはしない。

少年は、更に矢を放つ。


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■■■■■を縫い止めてから、更に数十万発。
傷を癒し再生せんとする膨圧を押し返し、
表皮を矢で埋め尽くし、
ソレに刺さる矢の殆ど全てに、更に矢が刺さるまでに矢を撃った。
二百万を超えるだろう矢は一つ残らず、
初速を維持したまま減速も加速もせず、
折れもせず曲がりもせず、
なおも直進を続ける。


ソレ全方位からこの絶対の圧迫を受けている。
極限まで押し潰され、サイズは今や芥子粒以下。
それでも、なお潰される。
全ての矢は、粒を挟んで反対側の矢と接触寸前。
それでも一つとして外れず、逸れず、直進を続ける。
やがて粒は、長さがその意味を失う量子レベルにまで潰れ……ようやく全ての矢が同時に衝突した。

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永遠から解放された矢は、金色の魔力を一瞬に解き放つ。
■■■■■の僅かな痕跡も残さず完全に、絶対的に消滅させ、自らも消滅した。
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少年の初陣が終わった。彼の魔力、体力、生命力、全て万全のまま、服にすら疵一つ無かった。
それでも精神は疲弊したらしく、地面に大の字になり大きく息を吐いた。

「お疲れ様。頑張ったね」
優しい声。
「どうだった、かな」
「格好良かったよ」
少女は、少年の隣の地面にぽん、と横たわる。
二人、夜空を見上げる。少年は動こうとしない。少女は何も言わない。
沈黙。
「僕じゃなかったら、もっと上手くやれたのかな」
「どう思うの?」


少年は答えない。
「ねえ…」
少女は問う。
「今なら、まだ帰れるよ?それで貴方を嫌いになったりはしない。ずっとじゃないけど、時々は会える。アレを倒せる人を私が見つけるから、ここで待っていて良いんだよ。停まっていれば、瞬きの間に元に戻れるわ」
少年を見つめる。

少年は首を振る。
「行くよ。ゴメンね、弱気になってた。下っ端にこんな手こずってたらどうなるんだろうって」
「うん」
少女の顔がぱぁっと明るくなり、すぐに恥じるように暗くなった。
好きな人に重い宿命を背負わせることを喜ぶなど!
…少年は、彼女の頭を撫でて宥めた。


「止めるんだったら、君が全部説明してくれた時に決めてなきゃダメだよ。僕はもう『枝』を背負わせてしまったんだ。その責任を放り投げて逃げたら、もう君どころか…家族に合わせる顔も無いよ」
「でも」
「君は充分説明してくれた。考える時間もくれた。僕が自分で決めて、自分でやったことだよ」


「行こう」
少年は起き上がり、少女に手を差し出す。
少女はその手を取り、引かれて起き上がる。
彼を導く立場の自分が導かれるとは。少女は一瞬苦笑いする。少年に惚れ直す。
そうしてから、いつもの笑みを彼に見せる。

手を取り合い、並んで歩いていく。
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こうして、少年はこの世界から去った。誰からも忘れ去られながら。
愛する家族と、この世界の未来を取り戻すために。
愛する少女と歩み、守る為に。


その後、少年は…二人はどうなったか?
あの少女は何者か?少年の力は?それは今この■■で語ることでは無い。

結果だけを言えば、彼はあの■■■■■を倒し、世界に未来を取り戻した。
数億、数兆の矢を放ち、気の遠くなる彼の時を過ごしながら。
今、語れるのはそれだけだ。


そこから更に先のことについては、ここでは語らない。
彼の残した想いの矢は、この世界を救い、今も守り続け、やがて結実するだろう。

それは『エバー・ラスティング・アロー』において語られる、想いの矢の一つに過ぎない。そして代わりの無い唯一の矢でもある。

⇔その結実、或いは過程、或いは想いを見届けて頂ければ…そして心の端にでも何かを残して頂ければ、幸いである⇔

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■■■■■・■■者:『■■の■■』より

警告:この■■は■■されています。
警告:この■■の■■は■■されています。
警告:この■■の解除には■■が必要です。
警告:この■■の解除には■■者に■■が■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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「おはよう、パパ、ママ」
「あけましておめでとう、▲▲」
「あ…あけましておめでとう!」
「慌てて言い直さなくても、おはようでも良いわよ」
「間違えて無いもん!…それより■■は?」
少女は去年生まれたばかりの弟の名を呼ぶ。
「…部屋よ…?」
「もう!まだ寝てるのかしら?」
「どうしたの?」
「昨日■■君と約束したの!聞いてたでしょ?二人で初詣行って来るって」

「……二人で?」
「え?あれ…?」
生後半年にも満たない■■と小学生を二人で人混みに行かせる訳が無い。
「…何言ってるんだろ?私?」
少女は呆然と立ち尽くす。

「まあ、後で4人で行くとしよう」
父が宥めるように言う。
「まあ、その前にお雑煮でも食べましょうか」
冷蔵庫を開け、小分けしておいた材料を取り出す。
「あら…?」
7食分ある。しかもそれとは別に、既に1食分使った跡がある。
幼い■■を除く家族3人、全員の2食分の筈なのに。

(きっと多めに用意したのを忘れてるのね、私)
自分をそう納得させ、さっと調理を終わらせる。息子もベビーチェアに座らせ、全員で座る。


……4人家族で囲む初めての、正月の朝食。



これ程めでたい事もない筈なのに、何故か通夜の様な空気だった。
気付けば3人は…涙を流していた。何が悲しいのかも分からず、だからこそ余計に悲しく、涙が止まらない。
その空気のせいか、息子も泣き出した。
食事は完全に冷えていたが、家族が泣き止み、それに気付くのはもう少し後のことだった。



ミストルティン編・外伝『ロスト・アロー』 終わり。

ミストルティン編・0話「大戦の英雄~ダブル・ボールド・エクスドリーム」に続く
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