星霧の館

創作小説の他、特撮やFFSの記事を作成し無事に世界は崩壊した…

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ミストルティン編 3話 「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」 #2 「装甲機、GO!RUN!」

2014.01.20 (Mon)
前回:#1 「プリーズ、セイ・オールライト(Please, say alright)」 // #2 togetter版 / 第三話まとめ

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4月9日(火)13:05。茨城県笠間市・来栖見鷹山住宅街。浅空家自宅。
午後は部活動も無かったので、勇矢は昼休みになると即座に帰宅した。
結果的にだが同級生の追求から逃げた形になる。実際『愛川由理』の指摘は全て真実な為、『嘘がつけない』勇矢にとっては性質が悪すぎた。
「お帰りなさい、ユウヤ」
妹の結希が昼食を作ってくれていた。小6の彼女も今日から始業だったが、彼女の学校は地元。
一時間前には帰っていた。
家族4人で昼食を取り、半頃に再度出かけた。『明日』の準備のためだ。

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―昨日、勇矢が入手した『M文書』。
10月末に世界が破滅するという予言にして、預言。
世界が破滅する未来を変える為には、勇矢が動かねばならない。
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ミストルティン編 第三話 「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」 #2 「装甲機、GO!RUN!」
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20:08。再度帰宅する勇矢。
「ゆーや、おかえり~」
脳を蕩かすような少女の声。由理言うところの「親戚のお姉さん」染川絢女(そめかわ あやめ)である。 4年ほど前から同居している彼女は、勇矢よりもやや背が高い。
勇矢は165cm、中一にしては高身長なので、彼女は日本人女性の平均より大分高い。
腰までかかる特徴的な黒髪に、豊かな胸。春めいた色の着物を着ている。同級生男子に見られた日には、次の朝日はおろか夕日すら拝めないだろう。
「ご飯もうちょっとで出来るから、待っててね~」
「え…まだかかるの…?」
「あと20分くらいかな?そこのパン食べて待っててね」
鍋をかき混ぜながら絢女が言う。勇矢の帰宅に合わせて、軽く焼いたパンの上にチーズを塗りオリーブオイルと塩を掛けたもの、が数切れ用意してあった。
勇矢はパンを齧った。昼は常人の3倍ほど食べたが、それから7時間近く缶飲料程度しか口にしていなかったため、有り難かった。
「味は期待してるけどさ…」
「うん!」
「まさかまだ作ってたとはな…」
半ば呆れた口調で勇矢が言うのも無理はない。昼に彼が出たときも彼女は材料を炒めていたのだ。
もっと言えば一昨日の夜から仕込みは始まっていた。
その間2つのガスコンロがほぼずっと塞がっていた。
睡眠すらも寝袋を使って台所で取っており、勇矢も巻き添えを食った。味は保証付きなので不平こそ出なかったが、おかげでこの2日間、勇矢や妹達は調理に大層不自由した。
絢女が料理に時間をかけるのは良くあることではある。
しかし普段なら半日を超えることは…少ない。
一週間かけてクリスマスと年越し、お節の用意をした年末年始以来だ。
彼女が『やらかす』のは大体がそういう催事の時だ。
しかし…勇矢は思った。何故こんな何もない時期に?
「あーや…なんかめでたいことあったっけ?」
食べ終えた皿を端に避けながら、素直にその疑問をぶつけた。
「え、ゆーやの進学祝いと結希ちゃんの進級祝いよ?」きょとん、とした顔で絢女が答えた。
「去年までこんなんじゃなかっただろ?」
勇矢・結希の過去4回分の進級祝い。それなりに祝われた覚えはあるが、ここまででは無かった。
「『進学』祝いするのは私初めてだけど?」
「そん」…『なめでたいことでもないだろう?』という言葉を辛うじて飲み込んだ。
流石に失礼極まりない。
「…ありがと」
「へへへ~お礼は食べてからでいいよ」
笑顔で言うと皿を出し盛り付けを始める。勇矢は敢えて手伝わない。こう言う時は最後まで自分でやりたがる。
20:30。家族4人が揃い、夕食が始まった。例によって父母はいない。
メインはカレーでシーザーサラダや冷製スープ、卵料理、ローストビーフや、チキンなどがついてきた。カレーは具材が柔らかくなるまで良く煮込まれながらも、口に入れるまではしっかりとして崩れない絶妙な加減で、辛口のルーやスパイスが良く浸みこんでいた。
サラダは対照的にシャキシャキと歯応えがあり、スープはカレーで温まった口をさっぱりさせるには最適で、食感や温度に飽きが来ない構成になっている。食器も良く考えて選ばれており、音楽も邪魔にならず、かつ食器の音が薄れる程度の音量でFMラジオから楽しげな洋楽が流れていた。
30分程してメインの食事が終わる頃には、大鍋のカレーと8合炊かれた白米も空になっていた。
6~7人分相当の量で余りすら出なかった。絢女の采配と、彼女と勇矢が2人分程ずつ食べた。
デザートにはハーブティーと、バニラアイスを乗せた温かいタフィー。
熱でアイスが溶けて浸みこみ、ただでさえ恐ろしく甘いタフィーが更に甘くなる。そのままでは胃もたれしそうなそれを、茶で口を落ち着かせながら収めていく。
「ごちそうさん…最高だった」
「ありがとっ!」
豊満な胸が勇矢に押し付けられ潰れる。

食事を終えると、絢女は後片付けを始めた。
長い調理時間の合間に片付けも並行していたとはいえ、かなりの量だ。
20分はかかるだろう。風呂のスイッチを入れ、沸いたら先に入るよう残る二人に勧めると、勇矢は自室へと戻った。

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―昨日、勇矢が入手した『M文書』。
10月末に世界が破滅するという予言にして、預言。
世界が破滅する未来を変える為には、勇矢が動かねばならない。

実際のところ、公的な魔術師の機関か、彼の後見人にでも訴えれば、勇矢よりも早くそして確実に敵を破壊してくれるだろう。勇矢は安堵して深く息も吸えるだろう。
だが…それは出来ない。
奴等は自分の手で倒さねばならない。恐らく後見人の手を借りる訳にはいかない筈だ。

昨夜のうちに、すぐ必要な情報だけは頭に入れてはあったが、それを読み直す。
大半の情報は即座に理解できたが、分からない言葉が残っていた。
全ての元凶である『クロスロードUUK』の『UAR』。
この中のクロスロード、という語には聞き覚えがあった。
それを頼りに略語辞典を引きつつネット検索で調べる。20分ほどで『UUK』の謎は割とあっさり解け、『UAR』についても更に10分で解けた。

……実にしょうもない真相。
それが率直な感想だった。

続いて文書と共に受け取った『報酬』のうち、ウェブ上で取得可能なものだけを手早く確保する。同時に証券会社に株取引の注文を数件出した。
そして明日の天気予報を再確認する。今日だけで二十回目になる確認。
やはり、明日の新渡町は夕方から大雨だ。
新渡町周辺の地理・地勢・人口分布を含む地図情報などを得た。

22:45。
「こんなもんかね」
独り言で作業に区切りをつける。
当面必要な情報のうち家で得られるものは、これでほぼ得た。
『明日』は問題あるまい。後は週末辺り、図書館や役所辺りにでも行けば良い。絢女を呼んで風呂に入り、就寝の準備をする。

23:20。普段は1~3時間しか眠らない勇矢だが、今日は久々に6時間ほど眠るつもりだった。
「大変ね~ゆーや。手伝おーか?」
湯たんぽめいてよく温められた体の絢女が言う。
「いやフォームドのほうだけで良いよ……馬鹿馬鹿しくてやってられん…」
ハァ…と溜息をつく。
「バカバカしいってなによ~」
頬を膨らませる絢女。
「いや、あーやのことじゃないよ…UARのクズ共のことだよ。相手にするのも馬鹿馬鹿しくて…」
「まあ、いいや。とにかく今日はもう寝よう」
布団を自分と絢女に被せる。
「え~少しは遊んでよ~…えい」
「おぅっ!」
自分の胸に勇矢の顔を挟み込むと、片手で抱き寄せる。
「む、む…!」「ほら、ぱふぱふぱふ…」
片手だけで器用に、両胸を勇矢の顔に何度も押し当てていく。
23:35。ようやく解放される。
「ハァッハァッ…ハァッ」
二重の理由で呼吸が荒い。柔らかな感触は抗いがたく、途中で振り払える訳が無かった。
「どぉ?これでも遊ぶ気ににならない?」
「そうしたいのは山々だけど…明日死闘だからさ…万全にさせてくれよ」
「だからそんな奴私がパッてやったげるって」
実際、絢女は強い。数百発の水爆の直撃でも彼女は滅ぼせない。
勇矢が死闘と呼ぶ戦いでも、指一本で片付けるだろう。
「だから奴等はどうでも良いんだよ…死闘なのは試合のほうだよ」
「じゃあそっちもわた」
「あーや」
「むー」
再度頬を膨らませる。
「それは僕がやらなきゃしょうがないだろ」
嫌々、といった口調の勇矢だが、その表情は今日一番の笑顔だった。絢女はそれに気付いていた。
「…じゃあそっちはいいけど」
「でも、もっと頼ってよぉ」
胸を勇矢の胸に擦り付ける。
「おぅっ…!…これ…以上頼ったら僕の存在意義と出番がなくなる…現状でどんだけ頼ってると思うの」
頭を撫でる。
「えー」
「あーやはもうちょい自分の有難味を自覚しなさい」
「我慢しなきゃ…ダメ?」
蠱惑的な瞳で見つめる。
「まあ…1時間くらいは良い…いやしたい、かな…6時半に起きて7時過ぎに出れば、8時半のHRには間に合うだろ」
「フフ…理解ある夫で嬉しいわぁ…
」絢女は勇矢をベッドの上に横たえると、互いの上着を肌蹴させ始める。
「じゃ、明日に備えて…いっぱい飲んでね?」
生乳を…おっぱいをさらけ出す。
揺れる胸。それをひたすら揉みしだく手。愛撫し合う腕。触れ合う唇。ぱふぱふ。乳房が弾んで揺れて揉まれて潰れて擦れる。抱き合う腕。ぱふぱふ。吸われる胸。繋がる躰。甘噛みする口。胸を揉みながら唇を奪い合う。ぱふぱふ。軽い口づけ。眠ろうとする男。止める女。腕の骨が折れた。ぱふぱふ。締め付ける手。外される両手首の関節。蹴ろうとした右脚が左諸共変形する。残る片腕も折れる。砕ける肋骨。
(首の骨が折れる音)。
食い千切られる肉。吸われる血。
(せき)。
締め上げる黒髪。爆発四散。消える命。蘇る命。体が組み上がる。一瞬の隙を突き逆襲の押し倒し。胸に吸い付く――



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4月10日(水)8:20、中等部1年1組。
「お疲れ様です。智明さん」
「ありがと、湊」
教室に入った智明は、湊と挨拶を交わす。彼女の席は入り口に近い。智明達は昨日同様、部室に寄って来たところだ。
昨日より早めに出た上に、隕石にも降られなかったので余裕で間に合った。
「おはよう浅空君」
湊の隣席の勇矢にも声を掛ける。返事がない!
「浅空?」
隆光も訝しがる。
彼は人見知りだが挨拶はちゃんと返す。寝ているのだろうか?だが睡眠中特有の規則的な呼吸音が聞こえない。
というより呼吸音自体が殆ど聞こえない。周りの生徒もその異様な様子にちらちらと目をやっている様だ。
「…死んでんじゃない?」
「生きてますよ……多分」
湊が答える。
「10分前にふらふら歩いてきて、座ったと思ったら…コレですよ…」
湊の後ろの女生徒、入須真悠が思い立ち、彼の肩に右手を伸ばして揺らす。
「浅空くん、そろそろ起きた方が…10分前よ」
彼女は軽く揺すっただけだったのだが、勇矢の首が、がくっ、と背後に落ちた。
「ひっ」
そのまま千切れて床に落下した…かと思う程、力が入っていなかった。
そしてその顔は……あからさまに貧血。殆ど死体じみた顔色。僅かに動いているのがかえって恐ろしかった。
「浅空…保健室に行ったらどうだ?」
隆光が声を掛ける。その声にようやく勇矢は動いた。
「ぅぅ」
緩慢な動作で片手を、遮るように延ばす。拒否の意。地獄めいた枯れ声で応えた。
「……ああ…うん…大丈夫安心して安心して満身創痍だけどあんしんして」
(安心出来ない…)
「搾りとられた分は…搾りとりかえしてるから……あとは2・30分くらいでなおるとおもう。ごあんしんください」
(だから安心出来ないんだが…ん、待て?)
「搾る…だと…まさか、浅空…貴様っ…!」
隆光が激怒し、勇矢の首を持ち上げる!
「さては絢女のおっぱ…んぐっ」
その口を智明が塞ぐ! 同時にその首に湊が右手を添える。手の内側には小型のカッターが忍ばせてある。いつでも刃を出せる状態。周囲からは一切見えない。隆光は振り払う機会を逃していた。彼をして、そんな迂闊をしでかす程の衝撃。
「二人ともやり過ぎです。自重しなさい」制する湊。
「この場合、やり過ぎてるのは3人なんじゃ…」
刃物少女に対して智明が茶々を入れるが、彼女の非難がましい目線に口を噤む。そもそももっと大事な問題がある。
「その調子で…今日の試合やれるの?」
智明が問う。
「今日は…もう無理…ヤレない…殺される…」
勇矢の怯える声。
「…違う!戦えるのかって話!」
智明は小声で叫ぶ。
「だいじょうぶ…」
勇矢が答える。
「…あんな雑魚共、瞬きする間に」パチン!指を打ち鳴らす。今の衝撃で指が折れた…訳もない。
「皆殺しに出来る。忘れないことだ」
「ほう…俺達を雑魚扱いとはな浅空」
隆光は自分達への挑発と捉えた。
「良いだろう!おっぱいの恨み!放課後に晴らす!」
首の刃を気にしながらも声量を絞って宣言する。
「へ?雑魚扱い?」
殺気に当てられ正気に戻った勇矢は、きょとんとした。訳が分からなかった。おっぱい発言はともかく雑魚呼ばわりした覚えは無かった。
「浅空さん、今『あんな』雑魚共とか言いました?」
「うん?ああ、言った…かな」
隆光達を指すなら『こんな』が適当の筈だ。
「つまり俺達のことを言ったわけではないと?」
隆光が冷静になって気付く。
「ですよね?」
「ああ…うん」
勇矢は顔を120度右に逸らしながら肯定。
「だが、絢女の…!」
刃が押し込まれる。
「…おっぱいを吸ったのは本当か?」
「おいしかったよ」
「今日がお前の命日だ。忘れないことだ」
飢えた猛獣めいた目線をぶつけ、席へ向かう。。
「命日って…自分で覚えてても意味ないよね?」
他人事のような勇矢の感想。
「浅空君…その『あんな雑魚』…昨日言ってた件と関係ある?」
智明は小声で心当たりをぶつけた。
「ああ、うんそんなとこ……ほぅわぁ!?」
勇矢はバランスを崩し背後へと頭から転倒した。今の今まで椅子の足二本でブラブラとしていたのが災いした。
ここで担任がやってきた為、話は中断。彼は宣言通り1時間目の終わりまでには、少なくとも表面上は回復した。だが、その後も詳しい話ははぐらかし続けたのだった。


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16:15。放課後、星咲学園アクトボット部・部室。
13人の部員達は既に集まっている。今日の、プレゼンを兼ねた部内練習試合の為である。

智明・隆弘チームのロボット『ブレイビート』と勇矢のロボによるバトル。準備は整っていた。
チームのリーダーと、かつてこの中で最も優勝に近づいた少年…その二者によるバトル。部内試合の初戦としては他に考えられないカードである。
「逃げずに現れたな浅空勇矢!…貴様はここで…殺す…息の根を止める!!!」
源瀬隆光の目は殺意と憎悪に満ちていた。その対象である勇矢はブリッジでその目線を回避。その体勢のまま黙々と、そして意気揚々と口笛を吹きつつ机に操縦機器をセットする。
何故か肝心のロボットが手元にない。
隆光は全身に黒のパイロットスーツを着込んでいる。ゴムを含んだ繊維で出来ており、無数の銀色のラインが走る。頭部にはゴーグルや小型マイクのヘッドギア。操縦者用としては大掛かりな部類の装備である。何故、小型ロボットの操縦にそこまでの装備が必要なのか?

それは彼等の機体、『ブレイビート』がモーショントレース式であるがゆえである。
人体の動きを機体に反映させる技術。普通は高速戦闘下で使う様なものでは無い。操縦法と言うよりは、3D人体モデル作成などの為のデータ収集用として使うことのほうが多い。機械の操作操縦に用いる場合は、医療や精密作業など操縦者本人の技量を機械に再現させるのが目的である。
だがその場合も動作の再現は主に腕などの一部に留まるのが常だ。それは何故か?

例えば、足。ロボットを効率的かつ安定して移動させるにはどうすべきか?最適なのは車輪だ。人間の時点で走るより自転車や車のほうが早い。ならばロボットの足は最初から車輪がベストだ。段差の昇降には不向きだが、屋内用ならエレベータを使えば済む。屋外用でも車輪を複合型キャタピラにでもすれば登坂も出来る。場合によっては無理に自力で段差を超える必要すらない。人間や他のロボットで運んでのもいい。
勿論、二足歩行技術自体は義足の開発などに役立つ有用なものだが、ルールの縛りなどの理由が無ければやはりロボットの足には車輪が最適だ。
腕や頭などの他の部位についても、概ね同様だ。そもそもロボットは汎用型ですら、何らかの目的を持って作られる。その目的に最適化した形態になるのは当然である。

ゆえにアクトボットでは、同じ真似をする者は極めて稀である。人型ロボも全身動作模倣も珍しい。両者の併用となれば片手に余るチームにしかなかろう。少なくと去年までは。
人体全ての動きを正確にロボットに再現させるのには恐ろしく手間がかかる割にメリットが薄い。ハイコストローリターンなのだ。
最初から人型ロボ同士という縛りのある大会でもなければ、戦闘用ロボを人型にする合理的な理由は通常ない。趣味の領域だ。
人体の動きを再現するには、まず人間同様の骨格や関節部などが必要となる。その数は数百以上。動作を再現するには、これらも出来る限り再現しなければならない。パーツ数として多過ぎる。
重量は増え、コストもかかり、整備性も悪化し、熱も溜まる。これらの問題を解決しようと装甲を薄くすれば防御力まで下がる。
デメリットしかないように思える。
しかしそれを押してなお人型にするだけのメリットが彼らにはある。
それで10年度は全国出場を果たしたのだ。
勇矢も承知している。その恐ろしさも。
準備を終えた隆光が問う。
「浅空、お前のは?忘れたというのならば…俺が直接お前を…殺す!」
「うち何部だよ!」
機体モニタリングをしていた智明が突っ込む。
彼は本来、支援機体『エクスタッグ』の操作も行うのだが、今日は使わない。
一見すると彼らは2名で運用できる分だけ、有利にも思えるが、
勇矢は1人でとはいえ、2機を使う。五分と言えば五分だ。しかも勇矢は最大で3~4体を同時に操作出来る。更に20名近いチームが操作する10体前後の機体を何チーム分も破った実績がある。しかも09年度大会…小三の時点で。
実際、単騎で並の強豪1チーム分の戦力と言って相違ない。
そんな彼が今日は機体を2体1組だけ出す。
「まあ、素手のカラテ対決も興味あるけど…体調が万全でも勝て………本気を出して戦ってみたところで勝~てる気~しないはーず~だからな!」
何故か良い顔の勇矢。
「浅空さん、急ぐんでしょう?」
「あ、やべ」
湊に促されて、ようやくそれを思い出すと、勇矢は携帯電話を操作した。
『ピロ、ピロ、ピピ!…ジョーカーッ!Come closer!』
力強い電子音…に流暢な発音の平淡な英語が続く。
「えーと…そこのこ…こ?……そこの人!」
勇矢が河坂直人を指さす。
「僕?」
「そう…えー…観崎君!そこの窓を開けてくれ」
「河坂だけどね」
直人は苦笑しつつ窓を開けた。
次の瞬間。
「伏せろ!」
勇矢の声に直人は反射的にしゃがむ。
その頭上を何かが通過する。窓から飛びこんできたそれは着地。試合場へとエントリーしてきた。
直径1メートル程の球体。その下部には円状の台車。
球体の上には仮面をかぶったピエロめいた小型ロボットが乗っている。
『ドーモ、皆=サン、ブレイビート=サン、ジョーカーデス』
ピエロが芝居めいた動きで右腕を振り、挨拶する。その間に勇矢は回転ジャンプで操作ブースに座った。
机と脚元に設置された4つの操縦機器は、両手両足で操作するものらしい。

かつて彼は同様の器具で一度に数体の機体を操った。その操縦スキルが今この2体に集約されるのだ。
「浅空さん、準備は出来ているとみていいですか?」
「OK!」
ズドォン!と右拳を左手に打ち付ける。
「コレ…サイズ満たしてます?」
「球体は直径96cm、ジョーカーは60cm」
規定範囲だ。
―機体にはサイズ制限があり、『試合開始時に』1体につき一辺1mの立方体の中に納まれる必要がある。
チーム全体では2×2×1mの中に『その試合に出場する』全機が入れればよい。
重量制限は1体50kg以下、全体合計で200kg以下だ。
やろうと思えば50kgの機体4体、という少数精鋭も可能だ。
ジョーカーは10kg、球体は45kg、それぞれABでは重軽量級と超重量級相当。
ブレイビートは全高70cm、8kgの中軽量級。
人数的には2対1ということを鑑みてもなお、このウェイト差は観崎チームに不利な条件と言える。
球の高速度突撃が直撃すれば、軽量化しているビートには致命傷の筈だ。

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「それでは今日のルールを説明します」
審判役の湊が告げる。
「今日は一次予選のルールを元に変更を加えたものです。機体のレギュレーションは2次予選や大会と同じですが、制限時間が30分であることと、浅空さんが機体を2体使用する点が主な違いです」
二次予選は全国と同ルールだが、一次は違う。機体は1対1、サイズ制限は半分。操縦者は3名以下。制限時間15分で相手を倒せなければ引き分け。旗などの獲得点は無し。ブロックごとの総当たり戦。機体仕様以外は2次以降とは全く違う簡素なものである。
しゃがめばレギュレーションを満たすビート、ジョーカーは1次に出せるが、球体は出せないという訳だ。
あくまで変則ルールである。主に勇矢からの希望だ。
「あの」
白鳥仁美が手を挙げた。
「……白鳥さん、どうぞ?」
湊が質問と受け止めて、続きを促す。
彼女は唯一のアクトボット参加未経験者にしてロボット技術も素人、デザイン担当である。
「浅空君側だけ2体で良いんですか?」
「2対1は卑怯だろ!って?」
横から入る勇矢を無視して湊が答える。
「実際の予選ではだめですが、1人で2体動かす負担を考えればそう有利でも無いですよ」
「でもサイズも違」
「大きければ有利ってものでも無いんですよ」
この部では一番豊かな仁美の胸を一瞬睨みつつ、湊は答える。その声は冷淡だった。その胸は平坦だった。
勇矢達三人を勧誘しに行った先で、偶然見出されただけの彼女に湊はあまり肯定的に思えない。
ロボットと関係すらない才能に智明が惚れ込んだのが面白くない。彼好みの胸のサイズが面白くない。それでも彼女を表面上他の部員と平等に扱っている、つもりでは一応いるようだがどうしても棘が出てしまう。

「あんなのに智明さんが負けやしませんよ」
薄い胸を張る湊。
「主に俺が動かすんだが…」
隆光が主張する。
「あんなのとは言ってくれるね……い…伊藤?」
「この伊、都、谷、湊!…の感想にご不満でも?」
ゴミを見るような湊の目。
「アリガトゴザイマス!幸せです!」
勇矢にはご褒美だった。
「伊都谷さん?確かに少し……失礼じゃないの?」
村雨早紀が苦言を呈した。
「この程度は失礼のウチに入りませんよ?ねぇ?」
「浅空君はどう思うの?遠慮しないで言ってやった方が良いわよ」
「え?何この女同士の珍しくも戦い。果たしてどちらに軍配が上がるの?」
全く良く分からないが、既に何らかの確執があるらしい。それは勇矢如きでも流石に理解できた。
「まあ、そんな気にしないでよ…む…むら……さき…?」
「!」
「紫…紫堂…?紺?…あー!!…気にするな!ツインテールの人!!」
うろ覚えにしても余りに失礼極まりなかった。
「……ごめん、確かに気を使わなくていいかも」
「でしょう?」
呆れと疲れの混ざった表情で湊が言う。
「だが…糸…何とか?」
「この伊都谷に何か?」
「君は見?……部長チームが勝つと確信している訳だ」
「勿論です。私の…王子様ですから」
まさかの王子発言に部員達がざわめく。
「王子様!?」「王子様…」「王子だと!」「恋人とか彼氏ではないのか!?」「乙女!」
「僕王族なんだ……」
「…だから俺が動かすんだと言うのに」
湊は動じない。彼女の本心だ。
むしろ智明へのダメージが大きい。赤くなりうずくまる。中一男子には無理もない。
「で、だ。彼が絶対勝つと思っている訳だ」
「ええ?」
「ならば賭けをしても問題ないよね」
「賭け」
「僕が勝ったら…」
「万一勝てたら」
「いや何言ってんの!?」
智明が止める。
「君の…ふとももを撫でさせて頂く」
「……」
害虫を見るような湊の目。
勇矢にはご褒美だった。
「ふとももだと!?」「うわっ…」「ひっ…キモい…」「…」
「胸じゃないんだ…」「いや、直人、そもそも伊都谷に胸は無…頭頂部グワーッ!?」
非礼発言をした起矢の頭上から、に金ダライが落下。天井に開いた穴からのようだ。彼を見る湊の目は冷淡であった。
「…良いでしょう」
「湊!?」
まさかの許諾に智明が驚愕する。
「その代り貴方が負けたら…智明さん?どうしましょう?」
可愛らしい声と首をちょこんと傾ける仕草で彼に問いかける。
「殺す…もとい…死んでもらう」「え」「僕に負けたら…死んでもらう」「え」「死んでもらう」「え」
「いやあの」
流石に戸惑ってみせる勇矢。
(どうせ死ぬんだろ?)(いやまだ死ぬと決まったわけじゃ)
小声で昨日の発言の件を持ち出され、更に戸惑う。
智明は勇矢を見据えたまま、指だけで窓を指す。

「待て待て待て。死ぬのは良いとして、飛び降りて死ねって…ここ1階ですよ」
「頑張れ」
「頑張れって…ミ…サ…み?…黒井…」
「観崎智明だ。頑張って死ね」
先の湊以上に冷淡な目と声。
「そんな日本事件史史上に残りそうなマヌケな死に様に全力を尽くせと!?」
「湊の、あの、犯罪的に、エロい、ふとももに、接触する、チャンスを得られたんだ。その程度、安いリスクだろ?」
智明が問いかける。生きているワケを問いかけてくる光の様に。勇矢は暫し考える素振りを見せた。

「………………安いな。実際安い。安い~♪安い~実際安い~♪……安過ぎて逆に申し訳ないな…」
「ユウ!?」
七橋裕岐が驚愕する。
彼は、勇矢と同校にして幼馴染でもある。
「そうだ…だからもし触れても…その後で死ね」
「おつけい!」
快諾する。だがそれは勝敗に寄らず死ねと言うことだ。
「ただし1分は触りまわすぞ」
「長い!1秒!」
「短すぎるわ!50秒!」「2秒!」
「40秒!」「3秒!」
「み…部長お前、10秒単位とは言わんがせめて5秒単位づつ譲歩しろやぁっ!」「よ…まだ長い!」
「35秒!」「長いっ!」「せめて1秒ずつだろ!?」「長い長い!」
「この茶番が長いわ!」
スパパァン!
二人の脳天に紙ハリセン! 叩きつけたのは、島田延生だった。
「…いつまで待たせる気だ」
「「すみませんでした」」
痛くは無かったが、正論極まりなかった。二人は素直に頭を下げた。
「持っていて正解だったな。俺達大阪人必携のアイテム、ハリセン」
「違う。延生は京都」
氷堂蘭花が訂正した。
「…だが40秒ほど触るからな」「5秒延ばした!このクズが!」
言われた側から茶番を再開させる二人。パンパン!手を打ち鳴らしつつ湊が制しに入る。
「智明さん。…操縦ブースへ」「…はい」
気圧され、素直に歩いていく。
「浅空さん」「はい」
「両脚触って良いですよ」「え、マジで!?天使なの!?ふともも天使なの!?」
「その代わり15秒で」「……」
熟考する勇矢。
「負けても5秒だけなら良いですよ」「……乗った!」
「じゃ、操縦席へ」「はい」
勇矢も大人しく従う。
既に16:30。
いい加減に始まるかと思われたが、部員達をかき分けて勇矢に寄ってきた者がいた。
七橋裕岐だ。
「おい!ユウ!」
「七橋さん…何です?」
「死ぬって何だよ!?」
「…え?」
湊は勿論、部員達も呆然となる。彼を除けばこの中の誰一人として、「死ね」発言を本気になどしていない。
智明達の殺意は本物だが。その彼らにしても本気で殺す気はない。
いや、もう一人本気にしている者はいる。
勇矢本人だった。
「死ぬってのは…生命活動を停止するってことだよ七橋」
「おい、今からでも嘘だって言ってくれよ?」
「浅空勇矢は滅多に嘘をつかぬ」
「そこを何とか!」
「では滅多に嘘をつけ」
何故か起矢が言う。
「そうだユウ!嘘にしてくれよ!」
「え…ネタに乗っただけなのにまさか拾うとは…」
起矢はネタをネタで受けただけのつもりだった。驚愕する、というより呆れる。
「ネタじゃ無い!ふざけるなよ!」
裕岐が怒る。
「す…すいません…」
「あの…七橋君は何を言ってるの?」
早紀が問う。
「だからユウは嘘をつかないんだって!」
「いやごく稀にはつくよ」
「じゃあ今嘘だって言ってくれよ!」
「まあ落ち着け。ビールでも飲んでリラックスしな。娘の面倒はしっかり見ててくれよ」
あくまでも軽いノリの勇矢。
彼は滅多な事では嘘や出来ない約束はしない。人命が掛かっていれば別だが、今回は違うのだという。勝っても負けても本気で死ぬ気だ。それが分かる裕岐は焦っていた。しかい彼の危機感が周りの部員達に分かろう筈もない。彼の真剣さを見てもなお、これ茶番の続きかと閉口するのみだ。
「浅空君、急ぐんだろ?」と智明。
「そうそう、だからすっこんでてくれ…カッコいいとこ、見せましょう?」
「ユウ!」
「ああも~誰かソレ連れてってくれ。邪魔」
あくまでも食い下がる裕岐だが、業を煮やした興基と延生が両腕を掴んで引き摺って行く。
「放してくれ!」
その姿は『捕まった宇宙人』のようだった。

→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
時刻は16:35。 既に開始予定より15分遅れていた。
予定では16:50分に試合を終えて、10分間の休憩と片付け。その後17~18:00までミーティングのつもりだった。
「こんなに遅れたら仕方ありませんね…」
時計を見ながら溜息をつく湊。休憩を削るのも福利厚生的に考えて良くない。
「会議を5分縮めて今から20分間、55分までの試合にしますが…宜しいですか?」
「異議なし」と勇矢。
「仕方ないね。そうしよう」と智明。隆光も無言で頷く。
彼のスーツは着ているだけでもそれなりに疲れる。勇矢も帰りを急ぐ。早く終わるに越したことは無い。部員達からも異議は出ない。
そもそも、どちらが勝つにしろ、5分もあれば決着すると思っていた。
「…では、改めましてこれより観崎・源瀬チーム対浅空チームの試合を開始します。両者出撃待機スペースに…既にいますね。それでは試合…」
湊が腕を上げ、
「スタート!」
振り下ろす!


次の瞬間。
ブース中央で両者が衝突!
球突進を回避したビートが跳躍。回し蹴りが、球体上のジョーカーを狙う!
ジョーカーも跳躍し、回避!
同時に口から舌を伸ばしていた。その舌…ワイヤーは智明側の陣地へと接着!口内へ引き戻しつつ、ビートの背後を取る。
ビートはすぐに反転して後を…追いはしない。ワイヤー射出口が開くと同時に、球を蹴り床へ着地していた。勇矢側陣地へ。
互いに敵陣に背を向けて、球を挟んで向かい合う状態だ。
これは操作が難解である。
勇矢は機体カメラと目視の併用で敵を捉える。
隆光はカメラと片耳イヤホン、素のもう片耳のみを頼りにしている。
両者とも生身の耳は良く、カメラの性能も高い。
だが、肉眼で自機を捉えられないと感覚は掴みづらい。
加えて、敵陣に背を向けるということの精神的な圧迫も大きい。ルール上手出しはされないとは言え、ストレスにはなる。

カメラのみによる敵の把握。その臨場感が精神的圧迫に拍車をかける。
そのまま1分。互いに位置を微調整しながら睨み合いが続いた。部員達が固唾を飲んでそれを見守る。
戦闘中の3人を含む全員が、この最初の一合で両者のレベルの高さを改めて実感していた。
並の出場機体なら、最初の速攻で破壊されていただろう。
全員が大会や記録映像で彼ら3人の過去の戦いを見てはいた。直接戦った者もいる。
だが映像と違うのは勿論、大会でも間近では見られない為、やはり迫力・気迫というものが違った。
彼等にもプライドはある。両者どちらと戦っても、瞬殺される気は無かった。
それでも五分の条件下で倒せるか?
そう言われて、勝てる、と心から即答出来る者はいなかった。

―それは偶然だったのか、それとも両者ないし片方の意図によるものか。誰かの息を呑む音に合わせて、両者が再び動いた――――。


―ミストルティン編 3話 「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」 #2 終わり
#3 「薔薇の置手」に続く。




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