星霧の館

創作小説の他、特撮やFFSの記事を作成し無事に世界は崩壊した…

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ミストルティン編3話 「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」 #3 薔薇の置手

2014.01.25 (Sat)
前回:#2「装甲機、GO!RUN!」 /(#3togetter版第三話まとめ
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・前回のあらすじ:
2013年4月。
星咲学園中等部に新設されたアクトボット部。
ロボット競技大会『アクトボット』での優勝を狙う、新入生13人から成る部である。
アクトボットとは企業や大学チームが上位陣を締める、国内最高峰にして世界でも屈指の大会である。
本来なら中学生など1次予選落ちになるところだが、彼等は違う。

全国大会経験者、或いはそれと互角レベルの者が揃っている。
それも各々3名以下のチームと数台のロボで出した戦績である。
大抵のチームが20名近い人員と10台前後のロボを使うことを考えればまさに驚異。

既に以前の大会なら軽く決勝進出出来るチームだが、大会のレベルが上がった今では容易では無い。
彼等の活躍の反動で他チームが焦ったのだ。それ以上に不動のチャンピオンが手強い。

綿密に戦略を練らねば勝てない。
そこで、部内対抗試合を行い現状の実力を測ることとなった。
全国から集められた部員は元々4つの地域の4チームである。彼等を戦わせてデータを取る。

第一回目の試合は、浅空勇矢vs観崎智明・源瀬隆光。
勇矢は09年度の大会で1人で上位入賞した異常者。
智明は部長にして…勇矢に触発されてこの部を作った発起人でもある。

入学式の翌日、放課後。
アクトボット部誕生の切っ掛けとなった二人の対決。

途中、勇矢が世界の破滅の預言を手に入れもしたが、後回しだ。
今は目の前のこの試合に集中する。破滅を乗り越えたその先にあるもっと大事な戦い…その為に。
彼にとっては、そして智明にとっても、この部の存在はそれ程に重い。

勇矢のピエロ型ロボット『ジョーカー』。
智明の人型勇者甲虫機『ブレイビート』。
対峙する両者が再び……動いた!

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ミストルティン編3話 「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」 #3 薔薇の置手
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某国某所、現地時間:2013年4月10日(水)??:??
「おはようございます。マスター」
「うむ」
従者に挨拶を返す男。背は170cm台で髪は金、薄めの髭。
服装は自宅だと言うのに神経質なまでに整う。胸には細かい装飾の銀のロザリオ、腕には身の丈にやや余る豪奢な杖。
「今朝はローズティーに致しました」
「うむ」
食堂に用意されるトーストにクロワッサン、サラダ、軽い肉料理。この家の標準メニューだ。
食べ終えると、バラの香りのデザートが運ばれてくる。
それを食べつつ茶を飲み乾す。要求せずとも従者が替わりを注ぐ。
朝食を取り終える。
男は預けていた杖を片手で受け取り立ち上がる。
そして杖の先端で宙に大きく円を描く。その側に『鏡』が現出。
彼は魔術師。UARという組織の支配者である。

『鏡』の中心を杖で軽く突く。
遠話の汎用術式の一種だ。屋敷には電話もあるが、彼は年に数度しか使わない。
通信料を惜しんでいる訳ではない。
従者が『表』と連絡する為の物だ。
彼にとっては下賎だと見なされる。
ごく一部の案件以外では使わない。
通信料を惜しんでいる訳ではない。

汎用術式とは、魔術師の間で広く一般に知られる術式である。
個々人が独自に編み出す固有術式に対し、教本に乗るような秘匿性の薄い物である。

通信に出た部下と軽く挨拶を交わし、本題に入る。
「首尾はどうかね」
「はっ。万一の漏洩防止の為、最後の通信は3時間前でしたが、ほぼ整っているようです」
「ほぼ?」
声色がやや下がる。
「あ…いえ…その…『あとは『赤き六柱』を確保するだけ』と申しておりまして…その…今頃確保している頃合いかと思われまして…ええ。そのぅ…他は…ええ、完了しておりまして」
部下の中年男は、緊張で脂汗をかきながら言葉を選び答える。
「それならば、素直に『柱以外は整っている』と言いたまえ?」
男は表情を崩して言う。
「は、はい!」
「柱の鮮度と、直前に連絡が出来ぬのばかりは仕方の無いことだ」
「ええ…ご理解頂き…幸いです」
「柱の材料が転がっていない土地でもあるまいしね」
「は…はい…」
「そこまで私が狭量とでも思ったのかな?」
「ええ…。!?いいえ!いいえっ!」
怯えた声。殆ど悲鳴である。
「ワ、ワイドリバー達からは…次の連絡は……」
「いつかね?」
「あ、明日の…こちらの夕刻の予定になっております!」
「ずいぶんと遅い報告だね?」
「申し訳ございません!」

映像が見えているのは、部下にとって災い以外の何物でも無い。
彼は実際、婉曲的に『秘匿性重視の為に音声限定にする』提案をしたことがあった。
この『鏡』は短距離用で、高い燃費・安定性に加え…非常に高い秘匿性を有する。
しかし彼にとっては「ケイタイ」感覚の気軽なものだ。
だから音声ばかりか映像もやり取りしている。
秘匿性を重視するなら、映像という高密度情報は削るに越したことはない。
そう主張したのだが、主はこの調子で
『警戒のし過ぎでは無いか?』『私の術式では不安かね?』
と一蹴していた。

「その…儀式の成功は…『大魔法陣』を観測し、儀式によって陣が起動したのことで確認出来ることですし…万が一のことを考え、通信用を含む持てる全魔力で儀式を行うように、との…指示を…」
「……指示を?」
「指示を…私が行いました!」
「……」
「……」
「その…差し出がましい真似をして申」
「素晴らしい!」
「…え」
男が二度拍手する。音は出さない。
「実際合理的じゃないか、君。良い提案と心がけだ」
「は、はあ…」
「褒めているのだよ君」
「あ、ありがとうございます!きょ、恐縮です!」
薄い頭を全力で120度下げる。
「君の言う通り、首尾はそれで分かることだ。報告を急がせる必要もない。むしろ愚策かも知れないね。本来なら私か六騎士、もしくは上級幹部を帯同させたかったが、それが難しい以上、最善と言ってもいいだろう!」
「は、はは」
部下は曖昧に頷く。
男は軽く杖で床を突いた。
「何にせよ、だ。我らが悲願『大いなるC』の復活…その為の最後の大儀式、その始点の儀式なのだ…失敗は許されない」
「はい!必ずや!」
「吉報を待っているよ」
「はっ!」
通信を切り、『鏡』の術を止めた。
「もう暫く…もう暫くだけ御待ち下さい…我らが主よ…!!」
祈るような一人言を終えると、彼…魔術師組織UARの長…は自分の書斎へと向かっていった。

-―――――――――――――――――――
4月10日(水)16:39。アクトボット部・部室。

ピエロ型ロボット『ジョーカー』。
人型勇者甲虫機『ブレイビート』。
互いに敵陣を背に対峙する。
両者が再び……動いた!

接近する球乗りピエロ。迎え撃つ甲虫勇者ロボ。
球の回転と共にジョーカーが跳躍前転し…両足キックを放つ!
ビートは対空パンチ…と見せかけ、わざと空振る。
振った腕の勢いを乗せた右の蹴りで迎え撃つ!
ジョーカーは脱力し、右側の床へと舌ワイヤーで回避。
こちらも蹴りはフェイント。後ろから本命の球突進が迫る!

だがビートの蹴りもフェイント。確実に横回避をさせる為の布石である。
迫る球を、蹴りの勢いで左側転回避!ジョーカーの正面に迫る!
だがジョーカーも側転し、球のほうへと移動!
球も後退。突進前の位置に下がっていく…ジョーカーはその向こう側に隠れるつもりだ!
ビートは更にそれを先読みし、側転終了後に三連続バック転!球を挟み、ジョーカーの進行方向へと先回りを始める。
つまり自陣側へ戻ろうというのだ。
ジョーカーも既に側転を中断。来た方へ戻りつつある。

その結果。
球を挟んで互いに左回りすることとなった。
敵陣前から、ビートは観客側へ、ジョーカーは壁側へ。互いに右方向へゆっくり動く。
これはビート側にとっての不利。球は中央よりも1m程勇矢側にある。」
球のサイズと位置のせいで、ビートが彼等から完全に隠れている。
智明は基本、目視に頼っている。ビートの状態が見づらい。
隆光は一方、カメラに頼る。球の裏のジョーカーが見えない。
軽い分断工作だ。
更に勇矢の足元まで隠れており、足用コントローラーを見ての先読みも無理だ。
いつ攻撃が来るのかが読みにくい。
従って、このまま秒速数ミリの回転を続けて自陣側に戻るより無い。
一気に左右どちらかに動くのも得策でない。
手の内が読めないからだ。

ジョーカーには多くのギミックが仕込まれている。ワイヤー1つを見れば彼等には分かった。
人型ではあるが内部構造は人体とはまるで違う。再現する気もあまりない。
腹から刃がせり出したり、腕がチェーンソーになる可能性も否定出来ない。
むしろ勇矢の性格上、そういうギミックが絶対にある。

対するビートには、隆光の高い戦闘技術を反映出来る長所がある反面、大きな短所がある。
人の動きを正確に再現する分、人としての動きに捉われてしまう。
人体の動きを再現した上で、余計なギミックを追加するのは難しい。
関節の途中で腕を曲げたり大規模に変形するなど、設計段階で発狂モノだ。

つまり勇矢には、ビートの稼働範囲は予測しやすい。
その上で『隆光の動き』に対応出来るなら、本人の劣化コピーを相手にするも同然である。
10年度大会では、この欠点はあまり問題にはならなかった。
隆光自身が強過ぎて、ついて来れるものがいなかったからだ。
しかし勇矢は辛うじてそれに食いつける。
彼ははこの設計思想の違いと球体の存在で、技量差をカバーしていた。
優劣では無い。戦術の違いだ。

-―――――――――――――――――――
―同時刻、茨城県日館市新渡町。某所。

「戻ったか。シモン、キャロン」
紫ローブの男が徒弟の名を呼ぶ。
呼ばれた二人は廃屋の裏口から入ってきた。
拾ってきた「荷物」を手を触れずに操作しながら。
「遅くなって申し訳ありません」
「出来るだけ良い柱にしたかったので」
口々に言うと、同時に頭を下げる。
「構わん、まだ十分余裕はある」
二人の師、ワイドリバーは答えた。
徒弟たる二人は青マントの男がシモン・カレント、赤マントの女がキャロン・フェイリィ。兄弟弟子にして恋人でもある。
「済まんな…こちらはまだかかりそうだ」
その様子を見て、別の男がワイドリバーに詫びる。
その灰色ローブの男・クライムストーンは彼と同格の師位階。指揮権こそリバーにあるが、発言権は同等だ。
「言ったろう…集合予定は17:20。問題は無い」
「だがウチのロナルドの奴が…手こずっているらしい…クインスはロンを待ってから自分の担当を確保するつもりだったのだが…」
「彼に期待しているのは分かるがな…」
「分かっている…最悪クインスにすべて任せる」
ストーンは溜息を吐く。

-―――――――――――――――――――
―アクトボット部。

ガコン!
移動を続けるビートの背部で小さな機械音。
冷却剤、クーラントジェル。
ピーキーな性能のブレイビートは数分置きにこれを注入しないと熱暴走の危険がある。
プシュウウウウ!
背中から激しい蒸気。
背後の敵への目晦ましにもなるが、自身の正面の視界も多少塞がれる。
今のように強襲が予想される時には、避けるべきモノだ。
だが試合開始以来、注入の隙が殆ど無かった。
先延ばしにしていたが限界だった。注入が後1・2分遅ければ熱暴走で自滅していた。
勇矢は『幸い』仕掛けてこなかった。

冷却ジェル容器は残り3本。
本来は重量削減のため2つだけだが、今は支援機エクスタッグがいない。
ビートを乗せて移動・攻撃をしながら、充電しつつ冷却まで出来る優れものだが、大会ではあまり使わなかった。
殆どの敵チームを1分以内に全滅させたせいだ。
強敵に当たった今、隆光はその有難味を実感していた。

互いに回転は続き、球を挟んでビートが観客側、ジョーカーが壁側の端へ差し掛かる。
もうすぐ智明の視界にビートが入り、彼等の有利になる。
ここでジョーカーが仕掛けた。まず球が動く!
球を動かす足の操縦機は、依然として智明の死角である。そして今ビートの死角にも入った。
それを奇襲の好機と見ての攻撃だが、隆光は読んでいた。

智明がビートを視認出来ない先程までのほうが、勇矢には有利だった筈だ。
それでも仕掛けてこなかった。だがら二人は警戒を強めていたのだ。
警戒していてなお、その攻撃には反応が遅れた。
球は突進も後退もしなかった。その代りに浮いた。

下部からジャッキを出して30㎝ほど上昇し…床との隙間からジョーカーがスライディング!
だが遅れてもなお、隆光の反応は早い!
即座に跳躍回避!勇矢の狙い通りに。
球下部を抜け切ったジョーカー、その右足が伸びる!
本体から鎖で結ばれたチェーンドキックだ!
『ジョーカーリストレイント!』
電子音声がシャウト!

鎖キックが狙うのはビートの左足!損われれば機動力は大幅に低下する!
空中での回避は難しい。後ろに重量を倒せば回避出来るが…後ろは今場外!
その選択肢を顧みるより先、隆光は半ば無意識に蹴りを左腕で受けた。
恐るべき隆光の反応速度!そして彼の要求に応える、ビートの反応!

鎖により腕は捕縛!
ビートは引っ張られながらも、バランス調整で無事着地する。
ジョーカーは右足以外の三肢のみで距離を取り、自陣側へ移動。
球は既にジャッキを収納し…ビートを正面に見て後退!
今度こそ突進の構えだ!動けないビートへ!
「トモ!」
隆光が叫ぶ。
彼が『t』の口を作る瞬間には、智明は緊急用ボタンを押していた。
「行くよ!」
左腕が肩から千切れる。パージ機能!緊急中の緊急だ。
部位欠損は機体バランスに大きな影響が出る。ピーキーな性能のビートにとっては特に危険だ。
隆光はその損害をただ回避の為だけに払う男ではない。
千切れる直前、右手で左腕を掴んでいた。
自重にパージの勢いをも乗せ、鎖が絡んだままの腕を巴投げの要領で投げる!
狙うは敵陣では無く。自陣左前!
鎖にかかる力を双方向にすることで、ジョーカーの動きを確実に一瞬止める為だ。

その一瞬前!
ジョーカーは右膝から下を切り捨てていた。こちらもパージだ。
投げる方向に必要以上の力が加わったビートはこれに振り回され……ない!
投げの途中の姿勢で手だけで、腕をパッと放す。
その姿勢のまま空中前転、更に二連続前転。これで過剰な勢いを殺すと共に開始位置に戻る。
微速転回で敵陣に向き直り再クーラント。

プシュゥゥウ!ビートの全身から蒸気煙。
空のジェル容器が排出される。
残り2本に対し経過時間8分、残時間12分。
残量が厳しいが、早めに冷却した。
互いに自切とはいえ手足を一つずつ失った。大きく戦局が動き、次の冷却機会がいつ来るか分からない。

ジョーカーは腹這い状態で球に乗って後退を続け、こちらも開始位置へ退避した。
状況は五分。
ジョーカーは最悪、球とワイヤーで移動出来る。
ビートも片腕分の冷却剤が節約出来るとも言える。
ただし、姿勢制御は一気に難化した。
様々な欠損に対応出来るようにプログラムを組み、訓練をしてはいるが、それでも楽な作業では無い。
元よりビートは万全であっても、隆光以外には歩かせることすら困難なのだ。
これは冷却材を今使ったもう一つの理由でもある。
姿勢制御プログラムは、冷却材2本以下を前提としており、隆光もその状態で慣れている。

「とんでもねぇな…」
観戦する興基が漏らす。
固唾を飲んで見守る部員達も同じ感想だ。
「……」
ただ2人。微妙な顔で見守る裕岐と星護を除いて。

…互いに開始位置に戻っての戦闘。
両者は幾度目かの睨み合いに移…らない!
共に速攻!
勇矢は攻めに行く。
隆光も手の内を読もうとするのを止めた。妙な手を晒す前に叩き潰せば問題ない。
ビートは球に飛び乗る。ジョーカーは敢えてそれを妨害せず、両者は球の上で激突する。
互いに三肢でバランスを取りつつの打撃の応酬。

ジョーカーと違い、ビートは玉乗りなど想定していない。
だがビートの攻撃はジョーカーのソレを上回る精度と速度のままだ。
猛攻を繰り出し続け、敵に防戦を強いる。
ジョーカーは台車移動と球回転も併用しつつ危うげに捌く。
しかし足場の急な揺れにもビートは食らいつき続けている。
むしろ徐々に慣れて来てもいる。勇矢は内心で震えた。

ビートは不利な条件下で、敢えてジョーカーに近接した。
ジョーカーに有利な間合いは中距離。ビートの得意は近距離。
リスクと即座に天秤にかけ、その上で距離の有利を選んだのだ!

球が前転から右回転後転、下部台車も前進後転と激しく動く。振り落とす為だ。
ジョーカーは右腕を根元から風車めかせて回転させたり、右手を伸縮させての拳を見舞う。
だが超至近距離にまとわりつかれ効果が十全に発揮出来ない。
舌も出そうとする度に頭狙いの攻撃が来るため、迂闊に出せない。
球上の攻防は既に5分が経過。数十発の打撃の応酬がひたすら続き、そして遂に。
「おおっ!」
部員達からの歓声。
ビートの渾身の回し蹴りが、ジョーカーの腰から上を後ろにへし折った!
残るは球だけ!ビートは蹴りの反動を活かし球から飛び降りようとする。
その時!

――――――――――――――
―16:48。廃屋。

4人の魔術師達。仲間の集合を待つ。
彼等は全員で6人。師が2人に徒弟が2人ずつ。
彼等の儀式には、6人全員に1つずつ『柱』が必要となる。
定刻までに徒弟達4人が、師の分を合わせた柱を持ってくる手筈だった。
時間にまだ余裕はあるとはいえ、クライムストーンの徒弟、弟弟子のロナルドが苦戦している様だ。
彼は魔術の名家の一つ、エイクリー家の末子。まだ才能には目覚めていないが…。
「期待するのも分かるがな…今回の儀式はしくじる訳には行かない。刻限を決めさせておけ」
「そうだな…ではもう10分程…5時丁度まで時間をくれないか?」
ストーンが要求した。
「構わんが、クインスと言えど一人で三本の柱となると、制御が難しくは無いか?こちらの様に質に拘らないとしても時間もかかるだろう?直ぐに戻れるのか?」
ワイドリバーが問う。
「…ああ、そこは気を付けさせている。大丈夫だ。ではクインスに伝えておく」
「?…ロン本人にでは無いのか」
「ああ…アイツは…プレッシャーに弱いからな」
「そうだったな…」
フー、と二人の溜息が重なる。
ワイドリバーの徒弟達は、クインスに一歩劣るとは言え、二人ともそれなりに優秀ではある。
ただ時と場を弁えずにイチャつくなど礼儀に問題が多い。
何処も弟子の育成には苦労させられるものだ。

――――――――――――――
―16:48。アクトボット部。

―ジョーカーがヘシ折られ、残るは球体だけ!
ビートが一度球から飛び降りようとしたその時!

球が勇矢から見て10時方向へ高速回転!
ビートの跳躍に合わせ足場を崩そうと言うのだ。
急に増した勢いに姿勢を崩しながらも、ビートは辛うじて床にしゃがみ着地!
しかしそこへ、有ろうことか球が台車ごと倒れ込む!
ビートは後ろに重心を逸らし、強引なバック転で辛くもこれを回避する。
だが隆光の耳には、この負荷に右手が軋む音が聞こえていた。

隆光は詰将棋の如く、徐々に追い詰められる感覚を覚えていた。彼の先読みは一時追い抜かれたが、今や抜き返していた。だが既に姿勢の変更が追いつかない!

ペシン!倒れた球体にワイヤーが接触する。
同時に球も床に擦れつつ高速回転、更に台車側面から勢いよくアームが飛び出す。
床を押して機体を起こそうとする。ビートも即座に立ち上がる。
休む間は無い!
「トモ、QS(Quick Steam)とPR(Purge the Right)!」
「了解!」
二人だけに通ずる暗号で会話!迎撃態勢を整える。
MT技術では再現出来ない動きは、音声入力か智明承認により実行される。
そこにジョーカーが飛来!

『ジョーカースティンガー!』
右拳で殴りつける構えだ!回避は間に合わない。
ビートもそれは承知で、右拳で迎撃の構えだ!
両者の距離は既に1m!50cm!30cm!
ジョーカーの右腕内で、シャフトが肘の付け根内部を叩く!
その衝撃と圧縮空気圧で右腕が本体から切り離され、ロケット弾の如く拳が射出!
対するビートは自重を乗せた拳で迎え撃つ。
拳が衝突する直前!
……ププシュシュウウウウ!!
凄まじい蒸気がビートの拳から勢い良く吹き出す。ジョーカーと勇矢の視界を塞ぐ。
二発分のジェルで一気に冷却を行い、その蒸気を収束噴射したのだ!

咄嗟に飛び退くジョーカー。
その顔面に何がが直撃する…ビートの右腕だ!
先程の負荷により限界と悟り、打ち合うと見せかけパージし、ぶつけたのだ。
これによりジョーカーの口部が損傷し、舌の射出穴が潰れた。
霧が晴れゆく中、反撃とばかりに球が突進する。
それを回避せんと後退するビート、その様子もおかしい。

おもむろに隆光がグラスを外し、放り捨てる。既に腕が無いのでビートの動作には反映されない。
「!?」「え!?」
部員達が驚く。このグラスは無論ビートのカメラとシンクロしている。それを捨てる理由は一つ。
カメラが壊れたのだ。だがいつ!?
「今のは分かりにくかったか。自分で解説しよう」
勇矢が唐突に喋り出す。
「パンチ対決の瞬間、挙動から多分霧が来ると読めた。だから霧に紛れてカウンターで針を撃った。発射口はワイヤー用の諸共潰されたのでもう打てない。ごあんしんください」
「……どうやってカメラを狙えた?」
智明が問う。霧の中で狙うのは難しい筈だ。
「見ました…見たんです。目だけが光っていた」
ビートの目は光っている。この目はカメラはなく、赤外線センサーを兼ねる通電サインに過ぎない。
実際のカメラは胸部分にある。隆光はそこから計算して機体を制御しているのだ。
……計算?
「カメラの位置は大体分かっていた。あとは」
「目の位置との相対関係から割り出したか」
両腕とカメラ、冷却剤を喪失したビートは自陣側端まで後退している。
右腕脚を失い、顔面の潰れたジョーカーは球に隠れてブース中央に下がっている。

残時間3分。決着の時が近い…!
部員達は熱い目で見守り、
裕岐は半ば冷めた目で見ていた。

ビートが側面をジョーカーに向けて立つ。
ジョーカーは腹で球に乗り、攻撃の準備。
互いに数度目の…そして最後の睨み合いに入る。
距離とタイミングを伺い合う膠着状態。
残り62秒!球が突進!
「RL!(Release the Leg)」
対するビートも脚部を解放、続いて小ジャンプ
脚部から展開したパーツが足の下で瞬時に組み上がる。ローラースケートだ!

そのままローラーと上半身の重心移動で球を回避!
球が反転し再度突進!
残57!ビートがブリッジし高速後退!追う球!逃げるビート!追うジョーカー!残54!逃げる…追う?ジョーカーが?ビートが?互いに背後を狙い合う!残50!片方が反転すれば、もう片方も反転加速!
反転!反転!そして衝突!残42!後退!前進衝突!ビート!ジョーカー!ビート!ジョーカー!ビート!ジョーカー!後退!前進!旋回!残り34秒!後退!残28!
球の台車は歪み、ビートの全身からは高温煙!
互いに敵陣に背を向ける!
勇矢は、ビートが操縦者二人の死角になる様、球の位置を巧みに調整している。
この状況は目視操作に慣れぬビートが不利か!?
だがこの状況を生むために負った損傷はジョーカー台車部の方が多い!
それを鑑みればまだ互角!
そして両者が……急発進!残22!
ジョーカー本体が動く!天井近く上昇!21!

一瞬の中の更に一瞬、隆光の注意がそちらに向く。

その瞬間、球体が、瞬時に、膨れ上がり、破裂!

ビートは既に球に向けて突撃済み!破片の弾幕に晒される!
…だが隆光はそれも承知の上で突進していた!
…勇矢の性格上、あんなこれ見よがしな球体に何も仕込んでいない筈が無いのだ!!

20.9。弾幕が直撃。
20.8。だが、
20.7。食らいながらも、
20.6。そのローラー足は破片を、
20.5。蹴って、
20.4。跳ぶ!
20.3。ジョーカーと台車の間の中空を
20.2。跳び越す!
20.1。弾幕が機体広範囲に直撃!
衝撃を受け流しつつ着地!
20!

ガタガタガタッ!
ビートが床を転がる。一方、ジョーカーは球体の中身に着地する。
19.5!よろめくビートを立ち上がらせつつ、隆光が『それ』を見据える。
19!ジョーカーの着地先にはカタパルト台!
上半身を180度捩じったジョーカーが槍の如く、そこに合体している。
18!ビートは機体を激しく損傷しながらも、自陣を背に出来た。
ダメージ覚悟で目視操作時のアドバンテージを優先したのだ。
両足6輪ローラー2基の車輪、各3・4輪と剥き出しの脚部シャフトや片目などを激しく損傷した。
だがなんとかあと一撃は出せる。

あのまま敵陣を背にしたまま防御すべきだったのではないか?
ビートの惨状を目の当たりにして、何人かはそう思った。
しかしそれは結果論。
球の中身が不明の状態で自機を死角に置いておくことの方が危険だった。少なくとも隆光はそう判断した。
そして突っ込んだのも最善ないし次善。
両腕が無くては防御など出来ない。回避もまず無理だった。
いずれにせよ、この現状こそが結果だ。
IFの話は後で存分に出来る。もとよりその為の試合だ。

残り17!
「トモ、BRS」
「…了解」
隆光の最後の指示。
16!
「ユウ!」
裕岐が勇矢に呼びかける。
「?」
勇矢は目線を敵に向けたまま、耳だけを向ける。
「……!」
15!だが裕岐は勝てとも負けろともいえないことに気付き、
「好きに、やれ!」それだけを伝えた。
14!
「OK!」
13!ズドン、と勇矢が応える。
12!両者が最後の一撃を構えた。
ビートは殆ど敵に背を見せるような構え。ジョーカー槍は、カタパルトの高さを調整し終えた。
11!
「残り10秒!」
湊のコール。それが合図となった!
「イヤーッ!」
勇矢が叫ぶ!
「ウォオオオッ!!!」
隆光も叫ぶ!
9!
「『ジョーカー・X・ドリーム!』!」
勇矢とジョーカーの声が重なる。ジャベリンの如きキック!
8!射出と同時に台車・カタパルト部は崩壊四散!その全存在を一撃の威力へと変換させた!!
7!ビートは動かない!
6!これは!5!カウンターキックの構えだ!4!ジョーカーを射程に捉えた!

タァン!
ここで智明がENTERキーを押す!残り3秒!
ローラーをパージしつつ、勢いでビートが高速右回転!互いの足が交差する。
その時、互いの足が同時に分離射出される!
2.5!針のついたビートの脚部がジョーカーの胸に突き刺さり、
鋭く尖ったジョーカーの脚部がビートの胸を貫く!
残り2秒!
………ビートの右目が光を失い、
……ジョーカーが『サヨナラ!』と電子音声を叫ぶ。
残り1秒!
ビートが場外付近まで吹き飛ばされ、
ジョーカーの体が破裂し、四散する。
0秒。

試合が終了した。


―ミストルティン編3話 「葬室からの励と責~イット・カムズ・レイド」 #3 終わり #4 に続く
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